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【愛着障害編②】愛着障害(アタッチメント障害)を発症したAさんのストーリー

2023.07.10
更新:2023.07.07

リーブラ相談室では、月に1回の「夫婦・家庭問題専門相談日」を設けています。離婚や別居、夫婦関係の不和、それに伴う子どもへの影響や子どもへの対応などのご相談を受けている元家裁調査官が、皆様のご相談のヒントとなる情報をコラム形式でお伝えしています。

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前回コラムにてご紹介した脱抑制型愛着障害のAさん。その後、どのような成長を遂げたのでしょうか。
今回のコラムでは、大人になっていくAさんの人生をたどりながら、愛着障害の対人関係についてお伝えしたいと思います。

<前回>愛着障害(アタッチメント障害)を発症したAさんのストーリー①はこちら

【愛着障害編②】
愛着障害(アタッチメント障害)を発症したAさんのストーリー

 子どもの愛し方が分からなかったAさんの母親。医師から「愛着障害かもしれませんね」と言われたことをきっかけに、愛着障害について色々と調べました。何となく感じていたAさんへの違和感や接しにくさのようなものの答えが見つかったような気がすると同時に、自分のせいでAさんに障害を負わせてしまったような気もして、うまくAさんと接することができない日々が続いていました。Aさんが中高生になる頃には、母親に対する反発も強く、母子間で衝突することも度々でした。Aさんは、ちょっとしたことで過度に怒ったり、逆に傷付きやすかったりと、扱いに困る子どもでした。

 Aさんとの付き合い方に問題を抱えていたのは母親だけではありません。Aさんの学校の友人たちも、Aさんとの距離感に戸惑っていました。というのも、Aさんの友達付き合いには特徴がありました。新学期になって、新しいクラスになると、誰よりも先にクラスメートに話しかけ、「うちに遊びにおいでよ!」などと誘って仲良くなろうとします。これ自体は悪いことではないのですが、仲良しの程度とAさんの態度にギャップがあり、結果として友達から距離を置かれる原因になりました。
 例えば、まだ友人になって数日なのに、毎日のように放課後「遊ぼう」と誘ったり、Aさんの大切な秘密や悩みを打ち明けたりしました。友人たちは、そんなAさんに対し、「何だかべったりしすぎて嫌だ」「そんなに深い関係じゃないのに深刻な相談をされても重い、辛い」と違和感を感じるのでした。

 また、Aさんは、仲良くなったかと思うと、すぐに小さなことで喧嘩になり、「あの子は信じられない」「あの子はすぐに裏切る」などと友達と絶交してしまいます。
 例えば、Aさんが普段から仲良くしているB子さんというクラスメートがいたとします。ある日、Aさんが登校すると、B子さんが他の友人と仲良く話している姿がありました。Aさんは、何となく面白くない気がして、B子さんと友人の会話に割り込みました。すると、B子さんと友人は少し驚いた様子を見せつつも、Aさんを交えて会話をしていましたが、ほどなくB子さんが「さ、次の授業の用意をしなきゃ」と立ち上がりました。B子さんとしては、何気なくしたことでしたが、その日の放課後、Aさんから呼び出され、「どうして他の子とは仲良く話せて、私とはできないの!これまで親友だと思っていたのにひどい!あの子と私とどっちと仲良くしたいの!」とすごい剣幕で怒られました。B子さんは、そんなAさんの様子を見て「この子と付き合うのはキツイな」と感じ、自然とAさんから距離をおくようになりました。

 こんなエピソードを繰り返してしまい、Aさんには学校で親しい友人がいなくなってしまいました。

 そして、Aさんの脱抑制型愛着障害が一番色濃く存在感を示したのが異性関係でした。
 中高生のときに同性の親しい友人ができなかったAさんは、大学生になった途端、異性との交際に目覚めます。Aさんは飲み会に誘われると必ず参加し、「この人だ!」と思ったら猛アピールします。小柄で細身のAさんを可愛らしいと感じる男性も多く、すぐに交際に発展することも少なくありません。しかし、交際しているうちに、Aさんはとにかく束縛するようになります。「1時間に1回はLINEして」「私が電話したら必ず出て」「女性がいる場に遊びに行かないで」等と無理難題の連続です。それをしてくれないと、泣いたりわめいたり、時には自傷行為までして相手をつなぎとめようとします。そんなアップダウンの激しいAさんに疲れてしまい、交際相手は早々に去っていきます。既婚者の男性を好きになってしまったり、友人の彼氏と三角関係になったり、とにかくAさんはどこにいってもトラブルメーカーでした。

 こんなAさんの対人関係について、みなさんはどう感じるでしょうか。
きっと、「人との付き合い方が下手だなぁ」「我がまま・自己中心的だなぁ」「振り回されそう」などとお感じのことでしょう。
 まさに、それが脱抑制型愛着障害の特徴なのです。母子関係において正しい愛情を受け取ってこなかったため、愛情に欠乏し、無差別に相手に愛情を求めます。注意を惹きたいし、かまってもらいたいのです。しかし、そこには相手の気持ちや様子を気にかけたり、慮ったりすることが欠けています。そのため、一方的で独りよがりな愛情表現になってしまう、人との距離感が上手くとれないのです。

 周りでもそのような人はいませんか?もしかしたら自分が・・と思う方もいるかもしれません。
親からの正しい愛情が得られなかったとしても、祖父母や親戚、周りの人々からの愛情があることで、このような愛着障害の傾向が出ないことも報告されています。それでも自分の中の想い・不安を話したい、ということがあれば相談室をご利用くださいね。

 さて、こんな対人関係しか築けないAさんですが、ついに結婚するときがやってきます。

次回はAさんが結婚し、希望を見出すのか、それとも絶望していくのか・・・。そんなAさんのその後を追いかけながら、脱抑制型愛着障害の治療や予後についてお伝えしたいと思います。

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