【Libraアイ】離婚後の親のコミュニケーションを考える~BIFF法とは?
リーブラ相談室では、月に1回の「夫婦・家庭問題専門相談日」を設けています。離婚や別居、夫婦関係の不和、それに伴う子どもへの影響や子どもへの対応などのご相談を受けている元家裁調査官(臨床心理士)が、皆様のご相談のヒントとなる情報をコラム形式でお伝えしています。
今回のテーマは「離婚後の親のコミュニケーションを考える~BIFF法とは?」です。
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■新しい時代の「親の距離感」
2026年4月、日本の家族のあり方は大きな転換点を迎えています。改正民法の施行により、離婚後も父母双方が子の養育に責任を持つ「共同親権」の運用が本格的に始まりました。
「離婚後も父母が協力して子どもを育てていく」、その理念は理想的です。しかし、相談の現場で聞かれるのは、歓迎と不安の声が入り混じっており、決して一様ではありません。
中でも、日本は長らく「離婚後単独親権」を採用してきました。「相手と協力し合えないからこそ離婚するのに、なぜ離婚後も関係を求められるのか」、「連絡を取るたびに激しい言い争いになり、結局子どもを傷つけてしまうのではないか」といった、切実な不安や戸惑いの声が数多く聞かれます。
しかし、離婚後も父母が協力して子育てできれば、子どもにとっても大きなメリットになります。そのため、今回のコラムでは、「離婚後、夫(妻)と協力して子育てするのが不安」という方に参考にしていただけるコミュニケーションの方法をご紹介します。
■アメリカ生まれの「火に油を注がない」メソッド、BIFF法
今回ご紹介するのは、共同養育先進国であるアメリカで開発された「BIFF法」というコミュニケーション・メソッドです。BIFF法はアメリカのHigh Conflict Institute(高葛藤研究所)の共同創設者であるビル・エディ(Bill Eddy)氏によって提唱されました。
彼は長年、家庭裁判所における「高葛藤(ハイ・コンフリクト)」なケース、つまり、一度火がつくと話し合いが平行線を辿り、激しい非難の応酬に発展しやすい元夫婦たちの紛争を解決してきました。
BIFF法が画期的なのは、相手の性格を変えようとしたり、こちらの正しさを認めさせようとしたりすることを、潔く「諦めている」点にあります。高葛藤な状況においては、論理的な説得や感情的な訴えは、しばしば火に油を注ぐ結果にしかなりません。そこで、やり取りの目的を「円滑な合意」ではなく、「火種を消し、最短距離でやり取りを終わらせること」にシフトさせたのが、このメソッドの神髄です。
では、BIFF法を詳しくみていきましょう。まず、「BIFF」とは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。
〇 Brief(簡潔に): 余計な一言を削ぎ落とし、短くまとめる。
エディ氏は、「長い文章は、相手に反論の材料(フック)を多く与えるだけだ」と説いています。多くの言葉を尽くして説明しようとすると、相手はその中の一単語や細かいニュアンスを捉えて攻撃してくるからです。説明すればするほど、火種を増やしていることになります。
〇 Informative(情報提供に徹する): 意見や感情ではなく、必要な「事実」のみを伝える。
自分の感情(悲しい、怒っている)、相手への評価(あなたはいつもこうだ)、教育的なアドバイス(子どもにとって良くない)を排除します。例えば、「あなたはいつも待ち合わせに遅れるので、少し余裕を持って10時に待ち合わせしましょう」と伝えるのではなく、単に「来週の土曜日の受け渡しは10時です」という事実だけを伝えることで、議論の余地をなくします。
〇 Friendly(友好的に): 攻撃の隙を与えないよう、事務的かつ礼儀正しいトーンを保つ。
ここでの「友好」とは、親しくすることではなく、「ビジネス上の礼儀(ビジネスマナー)」のことです。
「お疲れ様です」「ご連絡ありがとうございます」「ご確認いただけますか」といった定型句を使います。
〇 Firm(毅然と): 議論を蒸し返させないよう、ルールに基づいて明確な結論を提示して締めくくる。
これは「強気になる」ことではなく、「境界線を引いて終わらせる」ことを意味します。「これが私の最終的な回答です(もしくは、既に合意した内容を踏襲します)。これ以上この件で議論するつもりはありません」という姿勢を、攻撃的にならずに伝えます。返信を何度も繰り返すと、それは対話ではなく「紛争の継続」になってしまいますので、毅然とした態度でやり取りをクローズすることが重要です。
この手法は、もともと境界性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害など、コミュニケーションに特有の困難さを抱える相手とのやり取りを想定して作られました。そのため、相手がどれほど感情的であったり、攻撃的な言葉を投げかけてきたりしても、こちらがこの「型」にはめて返信することで、泥沼の議論を強制終了させることができるのです。
■共同親権・共同養育が真に「子の利益」になるために
親が離婚した後も、両方の親が子どもの養育に関わることができれば、子どもにとっても大きなメリットがあります。一方で、心理学的な調査によれば、子どもが最も心理的ダメージを受けるのは「離婚そのもの」ではなく、目の前で繰り広げられる「両親の激しい争い」です。共同親権になることで、離婚後も父母間で話し合う必要が出てきますが、その際、紛争が再燃するようであれば、子どもの幸せは守られません。
そのため、BIFF法のようなコミュニケーション方法を獲得することで、子どもを紛争の板挟みから解放することができます。
また、親自身の「メンタル・セルフケア」の観点でも、境界を意識して接することはメリットがあります。離婚後の生活再建には、仕事に育児にと膨大なエネルギーが必要です。そんな中、元配偶者からの攻撃的なメッセージ1通で、一日中動悸が止まらなくなったり、怒りで仕事が手につかなくなったりすることは、生活再建の妨げとなります。
BIFF法は、相手をやり込めるための技術ではありません。相手から投げられた「感情のボール」を、受け取らずに地面に落とすための技術です。返信をパターン化し、思考の時間を最小限に抑えることで、自分の大切なエネルギーを、自分自身の新しい人生と子どもの笑顔のために温存できるようになります。
「親密な話し合い」ができなくても、子どもは健やかに育つことができます。必要なのは、「平和な事務連絡」です。ぜひ、参考にしてみてください。
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リーブラ相談室では、一般相談にて夫婦関係や家族の問題などのお話を伺うほか、夫婦・家庭問題専門相談では、お子さまへの影響についても専門家が相談を受けています。
自治体等のサポートも紹介していますので、一人で悩まず、専門家への相談も検討してみてください。


