【Libraアイ 弁護士コラム】ストーカー規制法で規制される行為とは
リーブラでは、弁護士による各種講座や相談室では法律相談を実施しています。
Libraアイでは「弁護士コラム」として、弁護士の皆さん(持ち回り制です)がテーマを設定し、情報提供していただきます(不定期)。
今回のテーマは「ストーカー規制法で規制される行為とは」です。
ストーカー規制法で規制される行為とは
近年、ストーカー被害は後を絶たず、深刻な社会問題となっています。ストーカー行為は、被害者の心身に大きな傷を与えるだけでなく、時には命に関わる事態に発展することもあります。このような状況を受け、ストーカー行為等を規制するために「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下、「ストーカー規制法」といいます)が制定されました。
このコラムでは、ストーカー規制法で具体的にどのような行為が規制されているのかを解説します。
規制される行為:「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」
ストーカー規制法では、大きく分けて以下の2種類の行為が規制されています。
① つきまとい等
特定の者に対する恋愛感情などの好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で、その特定の者や、その配偶者、直系・同居の親族、その他社会生活において密接な関係を有する者に対し、以下の8つの類型のいずれかの行為をすることを「つきまとい等」といいます。
(1) つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
相手の自宅や職場、学校などの付近で見張る、待ち伏せる、進路に立ちふさがる、押しかける、みだりにうろつく行為。
(2) 監視していると告げる行為
「いつも見ている」「今日の服装は〇〇だったね」など、相手の行動を監視していると思わせるような言動。
帰宅直後に「おかえり」と電話やメールをする行為も含まれます。
(3) 面会・交際の要求
拒否されているにもかかわらず、面会や交際、復縁などをしつこく要求する行為。プレゼントを受け取るよう要求することも含まれます。
(4) 著しく粗野・乱暴な言動
大声で「バカヤロー」などと怒鳴る、車のクラクションを執拗に鳴らすなど、乱暴な言動を行うこと。
(5) 無言電話、連続した電話・FAX・メール・SNSメッセージ等
相手が応答しないにもかかわらず、無言電話をかけ続ける行為。拒否されているのに何度も電話やFAX、メール、SNSのメッセージなどを送る行為(いわゆる「連続メール」等)。
(6) 汚物・動物の死体等の送付等
汚物や動物の死体など、相手に著しい不快感や嫌悪感を与える物を送りつける、または相手の家の前などに置く行為。
(7) 名誉を害する事項の告知
相手の名誉を傷つけるような事項や虚偽の情報を、相手に直接、または第三者に告げる行為。中傷する内容の文書等を送付・掲示することも含まれます。
(8) 性的羞恥心を害する事項の告知等
わいせつな写真や文書、図画などを送りつける、電話や手紙で卑猥な言葉を告げるなど、相手の性的羞恥心を害する行為。
② 位置情報無承諾取得等
上記の「つきまとい等」と同様の目的で、以下のいずれかの行為をすることも規制対象となります。
(1) 相手方の承諾なく、GPS機器等を用いてその位置情報を取得する行為
相手のスマートフォン等を操作し、記録されている位置情報を盗み見る行為や、自分のスマートフォン等で位置情報を受信する行為。
(2) 相手方の承諾なく、その所持する物にGPS機器等を取り付ける等の行為
相手の車や持ち物などにGPS機器を取り付ける行為。相手のスマートフォンなどに、無断で位置情報取得アプリをインストールする行為なども含まれます。
「ストーカー行為」とは?
上記の「つきまとい等」または「位置情報無承諾取得等」を、同一の者に対し、反復して行うことを「ストーカー行為」と規定し、罰則が設けられています。ただし、「つきまとい等」の(1)から(4)までと、(5)の電子メールの送受信に係る部分の行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合に限ります。
もし被害に遭ったら
ストーカー被害を受けていると感じたら、決して一人で悩まず、できるだけ早く警察や弁護士に相談することが重要です。
- 証拠の収集
いつ、どこで、どのような行為をされたか、詳細な記録を残しましょう。メールやSNSのメッセージ、着信履歴、写真、動画なども重要な証拠となります。
- 警察への相談
最寄りの警察署や、警察相談専用電話「#9110」に相談してください。状況に応じて、警告や禁止命令等の措置、パトロール強化などの対応をとってもらえます。
- 弁護士への相談
警察への相談と並行して、弁護士に相談することも有効です。1人で警察署に相談に行くのが不安な場合、弁護士が同行することもできます。資力要件を満たす場合には、弁護士費用の援助を受けることも可能です。(日弁連委託援助制度・犯罪被害者法律援助)
ストーカー規制法は、被害者を守るための重要な法律です。規制される行為は多岐にわたり、身体的な危害だけでなく、精神的な苦痛を与える行為も含まれます。早期の対応が、被害の拡大を防ぎ、安全と平穏な生活を取り戻すための第一歩となります。「これくらいなら大丈夫だろう」と軽く考えず、不安を感じたらすぐに専門機関に相談してください。
弁護士(第二東京弁護士会所属) 尾川佳奈
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