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【Libraアイ】見過ごされてきた 片付けられないADHDの『夫』

2024.03.14
更新:2024.03.12

リーブラ相談室では、月に1回の「夫婦・家庭問題専門相談日」を設けています。離婚や別居、夫婦関係の不和、それに伴う子どもへの影響や子どもへの対応などのご相談を受けている元家裁調査官(臨床心理士)が、皆様のご相談のヒントとなる情報をコラム形式でお伝えしています。
今回のテーマは「見過ごされてきた 片付けられないADHDの『夫』」です。

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 みなさんの中にも「片付けられない妻」といったタイトルの記事やテレビ番組を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。そうした記事や番組では、とかく部屋の汚さをセンセーショナルに取り上げ、発達障害で片付けることができず、ゴミ屋敷のような家に住んでいる女性に焦点を当てます。
 しかし、こうした伝え方には、若干のジェンダーバイアスがかかっています。片付けられないのは女性ばかりではなく、むしろ男性の方が多いのですが、「女性は綺麗好きで整理整頓ができて当たり前」、「男性は多少がさつで大雑把なもの」という偏見があるからこそ、「女性なのに片付けられない」という点に異常性を見出しているのです。
 筆者は、夫婦問題に特化したカウンセリングを行っていますが、そのカウンセリングの場では、「片付けられない夫」との生活に神経をすり減らし、離婚すら考える妻からの相談が後を絶ちません。
 そこで、今回のコラムでは、片付けられないADHDの夫との離婚を決意した妻の話を事例形式でお伝えしたいと思います。

↓↓👇↓↓👇↓↓👇↓↓👇↓↓👇↓↓👇↓↓👇(「あるある」を詰め込んだ架空の事例です。)

Aさんは42歳の専業主婦。子どもはおらず、夫と二人で暮らしています。
そんなAさんには、結婚以来、大きなストレスがあり、そのストレスのために現在、離婚を考えているといいます。

 Aさんの夫は45歳の会社員。まじめに働いてくれるいい夫でしたが、大きな欠点がひとつありました。
とにかく片付けられないのです。結婚した当初、夫は自分の荷物の多くを実家に置いてきてくれたため、新婚家庭には大量の荷物は持ち込まれなかったのです気がつきませんでした。しかし、年数を重ねるごとに、夫の「おかしさ」に気づくことになりました。

 夫は、とにかく一度出したものを片付けられません。例えば、スーパーで買い物をしてきます。そうすると、買ってきた品物を机に並べ、入っていたスーパーの袋も置いたままです。それ以外にも、夫宛てに来た手紙も積み上げたまま、読んでいるのか読んでいないのかも分かりません。

 そして何より問題なのが「捨てない」ということ。旅行先でもらったパンフレットは何年も積み上げられたまま、穴の開いたパンツも捨てません。読まない本・書籍も山積み、着なくなった背広やワイシャツもとっておきます。挙句の果てには、納豆のパックすらなぜか洗った状態で保管しておくのです。家にはモノが雑多にあふれかえり、夫は常に「〇〇がない、△△はどこにいった」と探し回っていました。

 こんな生活の中、AさんもAさんなりに努力をしてきました。「夫は外で働いてきてくれるのだから、専業主婦である自分が家事をやらなければならない」と、夫のモノをせっせと片付けていました。しかし、すぐにそれは無駄であることが分かりました。
夫のものは日々増えていく。例えば、毎日届くDM。夫はそれさえも取っておくので、どんどん紙類がたまっていきます。「読んだら捨ててほしい」と何度も頼んでもすぐに忘れてしまうのか、最初からそのつもりがないのか、夫はついぞ一度も自分でDMを捨てることはありませんでした。

 自分で片付けることを諦めたAさん、今度は夫の自室を作ることにしました。夫に「物を捨てろ」「整理整頓しろ」と言っても無駄なことが分かってきたため、とにかく夫のモノを一つの部屋に押し込め、Aさんの部屋やリビングは快適に保ちたいと考えたのです。
 しかし、これも失敗に終わりました。夫のモノがリビングなどに置きっぱなしになっていると、目の敵のように夫の部屋に置きに行きましたが、そうした行為に対し、夫がキレたのです。
「自分で持っていくから、勝手に触るな!」

 もちろん、夫が自主的に自室に片付けることは皆無なため、Aさんはリビングに夫のものがたまっていくのをイライラしながら見て見ぬふりしなければいけなかったのです。

そしてとうとう辛くなったAさんは、夫にこう切り出しました。
「あなたは気にしていないかもしれないけれど、私はあなたのものがリビングにあふれ出してくるのがとても苦痛なの。自分の家なのに落ち着けないし、イライラしてしまう。私のしんどさを理解してほしいし、一緒に解決方法を話し合ってほしい。」

 しかし、残念ながら、夫がAさんの気持ちを理解することはありませんでした。取り合ってもくれませんでした。
「物が多いくらいで大げさだな。家に帰ってきたときくらい、好きにさせてくれ。」

このやり取りを経て、Aさんの気持ちは固まりました。  
「もう夫とやっていくことはできない。」

離婚を決意したのです。

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ここまで読んでいただき、みなさんはどう感じたでしょうか?
夫が片付けないだけで離婚だなんて大げさだ、そんなことを言うなら私なんて何度離婚しても足りない、そう思った人もいるかもしれません。

しかし実情はそんなに単純ではないのです。どういうことなのか? それは次回お伝えしたいと思います。

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リーブラ相談室では、夫婦関係や家族の問題などのお話を伺うほか、自治体のサポートなどについても、お伝えしています。
一人で悩まず、専門家への相談も検討してみてください。

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