【Libraアイ】子どもの不登校と夫婦問題(後編)
リーブラ相談室では、月に1回の「夫婦・家庭問題専門相談日」を設けています。離婚や別居、夫婦関係の不和、それに伴う子どもへの影響や子どもへの対応などのご相談を受けている元家裁調査官(臨床心理士)が、皆様のご相談のヒントとなる情報をコラム形式でお伝えしています。
今回のテーマは「子どもの不登校と夫婦問題」の後編です。Bさん夫婦の事例をみておきましょう。
前編はこちら
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■ケース② Bさん夫婦————————
Bさんはパートで働きつつ、小3の長女と小1の長男を育てている母親です。Bさんの夫は公務員で、地元の役所に勤めています。Bさんの相談も離婚相談だったのですが、蓋を開けてみると、子どもの不登校の問題が絡んでいました。
Bさんの長女は、現在、学校に通えていません。3か月ほど前、インフルエンザにかかり、学校を1週間程休んだ後、徐々に不登校傾向が出てきました。最初は、体調が悪くなったと途中で帰ってきたり、「頭が痛い」、「お腹が痛い」と言って2時間目から登校したりするようになりました。Bさんは、インフルエンザがきっかけで、体のバランスが取れなくなっているのでは、と見守っていましたが、1か月たっても2か月たっても体調が上向くことはなく、反対に、学校にいられる時間が減ってきました。
さすがにおかしいと思ったBさんは、何か学校でつらいことがあるのかと長女に聞いてみましたが、長女自身も学校にいけない理由が分からないようでした。そんな長女を心配し、Bさんは夫に相談しましたが、夫は「無理に行かせなくていいよ。色々やると逆効果だから」「そのうち行けるようになるよ」と楽観視しており、何も相談に乗ってくれません。
ずっと長女を心配し、想いや状況を共有したいBさん。「夫には1度だけでも、今の娘の状況を見ていてくれたら…」。そんな思いで夫に頼んでも、夫は、「無理しなくていいよ」「俺は口を出さないよ」と優しく言うばかりです。Bさんが泣いてしまうと「そういう時は何も言わない方がいいと思って」と、夫はそっと席を外すのでした。
ある夜、Bさんが「私ばかり負担が多い」と訴えると、夫は「そう思うなら実家に帰ってもいいんだよ」と言いました。まるで優しい言葉をかけるような口調でしたが、「僕は何もしないよ」と宣言されたようで、Bさんは深く傷つきました。
夫は悪気がなく、責められることを極端に恐れているようでした。けれども、妻の孤独や負担を共有しようとしないその姿勢に、Bさんは深い失望を感じていきました。
Bさんは、「この人は、私の人生の伴走者じゃなかったんだな」と諦め、一人で長女と向き合いました。家に一人でおいておくわけにはいかないので、パートにも出られなくなりました。せめてフリースクールにでも行かせたいと思いましたが、その費用すらBさんは支払う余裕がありませんでした。
Bさんは、社会との関わりがない中で、長女と二人きりで家にこもり、Bさん自身もメンタルに不調をきたすようになりました。妻子がそんな状態になってもなお、この状況に向き合わない夫をみて、Bさんは離婚を決意したのでした。
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2つのケースから「不登校と夫婦の問題」についてみてみました。
不登校児の数は増加の一途をたどり、いつ何時、自分の子どもが不登校になるか分からない、そんな時代がやってきています。しかし、親にしてみれば、子どもが勉強しないとか、学費が高くて困るとか、そういう未来は想定していたとしても、不登校はどこか他人事なところがあり、いざ自分の子どもがそうなって初めて慌てる、というところがあります。
子どもが不登校になると、親は予想もしなかった選択を迫られます。仕事の調整、学校との連携、家庭内での役割の見直し――。こうした選択を夫婦で話し合い、協力して役割分担できるか、夫婦の真価が問われます。何も問題がない状況下では、円満に見えた夫婦でも、「不登校」という家庭の試練によって、夫婦の本質があぶり出されることがあるのです。
不登校児に対する対応は、「これが正解」というものはありません。100人の不登校児がいれば、100通りの対応が考えられます。目の前の子どもの状況を親が受け入れ、子どもにとって何が最善か、そうしたことを考える中で、夫婦関係も強固になっていくのではないでしょうか。
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リーブラ相談室では、夫婦関係や家族の問題などのお話を伺うほか、夫婦・家庭問題専門相談では、お子さまへの影響についても専門家が相談を受けています。
自治体等のサポートも紹介していますので、一人で悩まず、専門家への相談も検討してみてください。