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【Libraアイ】子どもの不登校と夫婦問題(前編)

2025.05.06

リーブラ相談室では、月に1回の「夫婦・家庭問題専門相談日」を設けています。離婚や別居、夫婦関係の不和、それに伴う子どもへの影響や子どもへの対応などのご相談を受けている元家裁調査官(臨床心理士)が、皆様のご相談のヒントとなる情報をコラム形式でお伝えしています。

今回のテーマは「子どもの不登校と夫婦問題」。2つのケース(前編と後編)からみていきます。

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不登校が社会問題化する中、現在も不登校児は増え続けています。小学校における不登校児童数は約13万人、前年度比24%増となっています(文部科学省公表:令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果)。中学・高校でも状況は同じで、前年度比10%以上の増加率となっています。

最近では、「無理に学校に行かなくてもいい」という考えが社会に浸透し、フリースクールなどの選択肢も広がりつつあります。選択肢の多様化は歓迎すべきことです。その一方で、親たちは新たな葛藤を抱えるようになりました。教育方針の違いが表面化し、夫婦間の意見が噛み合わなくなるのです。

「卵が先か、にわとりが先か」。夫婦の不和が子どもの不登校を引き起こしたのか、それとも不登校が夫婦関係にヒビを入れたのか。原因と結果が複雑に絡み合い、解くのが難しい問題でもあります

今回は、前編と後編で紹介する二組の夫婦のケースを通じて、そのリアルな実情をみていきます。

ケース① Aさん夫婦————————

離婚の相談に来られた妻のAさん。その夫婦の不和のきっかけは、子どもの不登校とのことでした。

Aさんの長女は現在中学1年生。小学4年のときに不登校気味になり、6年生になるころにはほとんど登校できていませんでした。中学校に進学するタイミングで、何か変化が生まれればと期待しましたが、中学になってもやはり登校できない日が続いています。

そんな中、Aさんは、長女の気持ちに寄り添い、無理に登校はさせませんでした。不登校になり始めた当初は、なんとか学校に行かせようと励ましたり、ときには叱ったり、あの手この手で登校を促しました。しかし、色々なところに相談したり、書籍を読んだりするうちに、不登校の解決はそんなに簡単ではないこと、学校にいけない本人が一番苦しんでいること等を知り、見守る姿勢に変えたのでした。

しかし、Aさんの夫は、不登校に理解を示しません。「サボっているだけだ」と言い、長女を無理やりベッドから出そうとしたり、ときには暴力的になり、泣いて嫌がる長女を登校させました。Aさんは、そんなやり取りを見るのもつらいし、何より、不登校というものを理解しようとせず、自分の古い固定観念で無理強いする夫に嫌気がさしました。

そして長女も成長し、無理やり登校させるのが難しくなりました。夫は、無理強いをやめる代わりに、今度は無関心を決めこんでいます。中学進学の際、Aさんは、長女が通いやすい学校をと思い、オンライン授業が受けられるなど、柔軟性の高い私立中学校へ進学させたいと考えました。しかし、夫は、「どうせ登校しないのに、高い学費を支払うだけ無駄だ」と言い放ち、学費の支払いを拒否しました。そのため現在は、Aさんの両親から援助してもらい、何とか学費を支払っている状態です。こんな生活が続く中で、夫から子育ての協力、経済的な支援、両方が受けられなくなり、Aさんは離婚を考え始めたのでした

一方、夫にも思いがありました。夫は高卒でした。学歴がないことで社会に出てから随分と理不尽な思いをしたと感じていました。そのため、長女の将来を考えると、自分が悪者になってでも、ちゃんと学校に行かせたい、そう思ったのです。しかし、その思いは段々と「意地」になり、その意地も通じなくなると、親としての自信が失われていったのでした。

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このように、より子どもの近くにいる親(多くは母親)が不登校への理解を深め、柔軟に対応する一方で、他方が「こうあるべき」というべき論を主張し、子の養育方針について意見が分かれることがあります。

本ケースの通り、Aさんも夫も、子どものことを思っているのです。しかし「子どもの養育・教育方針の違い」が対立構造になってしまうことで、価値観の違いによる夫婦関係不和、経済的な問題などにつながり、夫婦の溝が大きくなっています。

今回のケース(前編)はここまでです。子どもを思う気持ちがありながらも、その気持ちのずれが、夫婦関係の不和につながるケースでした。
次回は別のケースもみていきましょう。

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リーブラ相談室では、夫婦関係や家族の問題などのお話を伺うほか、夫婦・家庭問題専門相談では、お子さまへの影響についても専門家が相談を受けています。

自治体等のサポートも紹介していますので、一人で悩まず、専門家への相談も検討してみてください。

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